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「アジアの未来」作品賞受賞『孤島の葬列』ピムパカー・トーウィラ監督インタビュー

Interview / 第28回東京国際映画祭

トーウィラ監督が考える、映画監督の使命

――今日のタイの政情をふまえ、本作が人々にどのように理解を促すと思いますか?

トーウィラ:本作がタイで上映され、私たちがしようとしていることを観た人が理解してくれたら、と思います。私たちが皆、平和や和解、平和的な共生を求めていることは共通意識としてはありますが、それも私たちが作り上げたイメージでしかありません。またそれは、あの人たちはこうあるべき、私たちはこうあるべきという思い込みからくるものなのでしょう。本作を通して、観る人に刺激を与えたいと思いますが、理解されない部分もあるかもしれません。それは彼らなりの解釈で理解してくれれば良いと思います。個人的に思うのは、私たちはタイ社会に生きるタイ人であり、どんな時代にも同じような問題が存在し、政治的、社会的な問題を含めあらゆる問題に囲まれて、人々は生きてきたわけです。だから、私たちは少なくともそれを映画に反映することはできます。この作品にそのような価値があるとしたら、私たちがこのまま偽りの幻想世界に浸るのか、それとも真摯に問題を解決するのか、という話し合いのきっかけとなるもしれません。映画制作者としての私たちの使命は、きっかけを作ることです。私たちは、物事のあるべき姿を伝えることはできません。この映画の主人公たちのように、たくさんの問題に直面したら逃げ出すこともあるかもしれませんし、誰だって問題は避けたいですからね。でも、結果がどうなるかは分かりませんが、そんな希望を持っています。

写真2

 左からウックリット・ポーンサムパンスックさん(俳優)、ピムパカー・トーウィラ監督、ヒーン・サシトーンさん(女優)、ヨッサワット・シッティウォンさん(俳優)(c)2015 TIFF

――最後に、日本の観客に向けてメッセージをお願いします。

トーウィラ:まず多くの人が、私たちの伝えたかったメッセージへの理解を示してくれたことに感激しました。確かな手ごたえがなくても、興味深く感じるポイントが何かしらあったということだと思います。私自身、自分の映画を日本人や他の観客が100%理解するものとは思っていません。それでも映画の雰囲気から伝わるものがあり、誰かはそれを感じ取るでしょう。今回、こうしてこの上映のために東京国際映画祭に戻って来られたことをとても嬉しく光栄に思います。私の初監督作である短編作品も1998年にここで上映され、以来この映画祭は私にとって常に大事なホームです。偶然にも、また同じ場所で本作を上映することができて、昔に戻った気分です。当時、私はまだ若く、そのデビュー作が他の映画を制作できるきっかけとなりました。だからまた、この作品が私の精神的な支えとなり、刺激となり、また他の国々でも上映できることを願っています。

(2015年11月1日)

作品情報

作品名 『孤島の葬列』
原題 Maha Samut Lae Susaan(英題:The Island Funeral)
監督 ピムパカー・トーウィラ
製作年 2015年
製作国 タイ
詳細 http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=39
コピーライト (c)Extra Virgin