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「秋の扇」ってどういう意味ですか?

「先生、『秋の扇(あきのおうぎ)』ってどういう意味ですか」

日本語の授業中のことです。11年生(高校2年生)の物静かな男子生徒から質問がありました。派遣先校であるクオックホック高校は、全国屈指の進学校として知られています。私は着任して1か月余り、授業のたびに「優秀な生徒たちだなあ」と感じていましたが、その一人、B・Tさんが、「『秋の扇』の意味がわかりません」と、質問してきました。

派遣先校であるクオックホック高校の正門

そばで聞いていたCP(カウンターパート)の先生が「どうぞ、生徒に教えてあげてください」と、私にサインを投げてくださいましたので、理解している範囲で答えることにしました。

「『秋の扇』ですか。むずかしいことばをよく見つけましたね。とてもいい質問ですよ。ちょっと、前に出てきてください。いいですか……日本人は、感じたことをことばにするとき、季節を生かして言うことがあります。(※黒板に「春・夏・秋・冬」と書く。)例えば、春。冬が終わり、暖かくなります。桜が咲いて楽しいです。外に出たいです。素敵な人と会いたいです。B・Tさんは、どうですか?」

「はい。桜、見たいです。」

「ですから、春は出会いの季節です。出会う、わかりますか。人と人が外で会います。偶然会います。それが出会いです。出会いの春ですね。学校も始まります。いろいろな人と会います。中には、仲良くなる人たちもいますね。夏になりました。暑いです。仲良くなった二人は、夏休みにデートをしたり、食事をしたり、とても仲良くなります。恋の季節です。暑いですから、扇で風を送りますよ。毎日、楽しいです。

B・Tさんと、夏のポーズ

夏が終わり、秋です。寒くなります。木から葉が落ちます。仲の良かった二人に寒い風が吹きます。扇はどうですか?秋に使いますか?」

「使いません。」

「二人はさようなら、です。秋は別れの季節です。夏のときは、二人に、扇が?……」

「ほしいです」

「そうですね。でも、秋に扇は?」

「ほしくないです」

「そうです。秋に扇は……必要ないです。『秋の扇』いらないです。あなたは、いらないです。という意味です。どうですか?」

「わかりました、先生」

B・Tさんと秋のポーズ

クラスメイト20人。みんなにとって、日本人の“ことばに対する感性”に触れるきっかけを彼が作ってくれました。日本語の魅力に触れる面白さを知って、日本への留学を目指している彼。その探求心に好感を持ちました。これからも応援したいと思います。

授業の様子を撮影してくださったCPの先生に感謝しながら、その写真を掲載します。

※掲載について、関係者の了解をいただいています。
B・Tさん (BaoTai: バオ-タイさん)クオックホック高校2年生
CP担当: chau( Le Phan thuy Chau:チャウ)先生

Writer
ベトナム フエ
肥土 貴美男さん

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