日本語パートナーズ短期派遣事業は、派遣先ごとに異なるニーズに対応するため、地域・対象者等を限定したうえで募集を行っています。
今回のブルネイ短期(2期)では、過去に日本語パートナーズとして派遣された経験を持つ方々の中から選考を行い、6名1グループとして派遣し、首都バンダル・スリ・ブガワンを中心に、中等・高等教育機関や成人教育機関等で、日本語を学ぶ学生等との交流を深めました。
日本語パートナーズブルネイ短期(2期)
荒巻英美、井上咲貴、大塚礼子、堤慎一、西舘真弓、根橋妙子
みなさん、スラマップタン(マレー語で「こんにちは」)! 私たち、日本語パートナーズ(以下NP)ブルネイ短期2期は、2023年10月16日から25日までの10日間、ブルネイで活動しました。現地では、首都のバンダル・スリ・ブガワンだけでなく、少し離れた地方も含め高等学校4校、インターナショナルスクール1校、大学2校、成人教育機関1校で活動しました。加えて、日本大使館主催の日本文化祭にも2日間参加し、ブースの運営とステージ発表をしました。
「やっしょ、まかしょ!」「ちょい、ちょい!」かけ声も心も一つに、「花笠音頭」
6人の個性を一つに!
私たちは、それぞれが行いたいことや互いの強みを生かした文化紹介を考えました。
日本語クラスのある大学や成人教育機関では、学習者がより多くの日本語を使えるよう、グループで自己紹介の時間を設け、名刺交換などを行いました。学生たちは私たちの想像以上に日本語が上手で、会話は盛り上がり、笑い声があふれました。
一方、日本語未習の高校やインターナショナルスクールでは、文化体験に重点を置き、「浴衣体験」「茶道」「書道」「日本の学校と日本の遊び」などを紹介しました。分かりやすさを優先し、文化背景や活動の説明などは英語を使いました。
また、日本文化祭のステージ発表で「花笠音頭」を踊ることにしていたので、文化祭前に活動した学校では「花笠音頭」を踊って見せ、文化紹介でミニ花笠を作成して一緒に踊りを練習して、日本文化祭の宣伝をしました。私たちの願い通り、ミニ花笠を持った生徒たちが日本文化祭を訪れてくれたことが、とても嬉しく心に残りました。
日本文化祭のブースでは、浮世絵スタンプと書道、水引飾り、ミニ花笠づくり、福笑いなどを体験してもらいました。ブースを訪れた多くのブルネイの方々と触れ合えたことも思い出深いものとなりました。
ハプニングがNPを育てる!
ハプニングはたくさんありました。到着2日目には11時間の大停電に遭遇し、懐中電灯の下で、翌日の活動の打ち合わせや準備をすることになりました……。
また3日目は、浴衣体験を予定していた学校へ到着すると、なんと男子校でした。共学だと思っていたので、女性用の浴衣をたくさん用意していた私たちは真っ青になりました……。急遽、次の学校のために準備していたプログラムと入れ替え、乗り切ることができました。臨機応変に行動できたのは、6人全員が長期NP経験者で、過去さまざまなトラブルやハプニングを切り抜けてきたからだと思います。数々のハプニングを乗り越え、チームの絆は一層深まりました。
また、私たちより1か月ほど前にブルネイへ派遣されていた短期1期の方が手作りした浮世絵スタンプ(富嶽三十六景の赤富士を再現したはがきサイズの消しゴムハンコ)を活用した文化紹介も行いました。ブルネイでの活動のバトンがつながったように思います。
ミニ花笠づくりとブルネイ短期1期の浮世絵スタンプを活用した書道、みんな笑顔
心のこもったおもてなし
何よりも印象的だったのは、「心のこもったおもてなし」です。私たちのバスが到着するなり、音楽や踊りの演奏が始まったり、生徒たちが歓迎の言葉を書いたボードを掲げてくれたりして、熱烈な歓迎を受けました。生徒たちの笑顔がまぶしく、私たちのやる気も一段とアップしました。「こんにちは」や「ありがとう」など覚えたての日本語を話そうとする生徒も多く、日本語が流暢な生徒も数人いて驚きました。
また、私たちが一方的に日本語や日本文化を教えたり紹介したりするのではなく、各校工夫を凝らしてブルネイの文化(舞踊・遊び・衣装・料理など)を紹介してくれたため、双方向の文化交流ができたことも心に残りました。
しなやかで美しいブルネイの舞踊
この活動を今後どのように活かしていきたいか
高校生が紹介してくれた民族衣装の数々
ブルネイの学校では、日本語を外国語の専攻・選択教科として学んでいる学生はごく少数です。ですが、アニメや音楽などのポップカルチャーを楽しんだり、独学でひらがなや漢字を勉強したり、オンライン学習を利用して日本語会話ができるようになった方に出会いました。日本文化祭では、水引でチャームを作ったり、漢字を書いたりすることに興味を持ってくれる方も多くいました。また旅行で日本に何度も来ている方が多くいることにも驚きました。(飛行機も直行便があります!)ブルネイには日本に興味を持っている人がたくさんいることが分かったので、これからはそのつながりを強くできるような活動はないか、考えていきたいです。
また、今回のブルネイ訪問では日本の文化を紹介する機会が多かったので、今後は反対にブルネイの名所や自然、そして文化や食事などを日本国内で広めていき、国際交流の一助となりたいと思います。
ブルネイの醍醐味、面白さ
晴天の空の下で輝くオールド・モスク
醍醐味と言うと華々しいことを想像してしまうかもしれません。ブルネイには派手なアミューズメント施設があるわけではありません。ですが、街が美しく(モスクなどの建造物が美しいということと、ゴミが落ちていないという意味でも)、静かで(大声で騒いだりせず、クラクションは10日間で一度も聞きませんでした)、また人々が穏やかで優しいので、とても安心して過ごせるという点がブルネイの醍醐味ではないでしょうか。有名なモスクや水上集落を訪れた際も、人混み や喧騒は皆無で、静かな空間で美しい装飾をゆったり眺めたり、水上集落の整備された街並みをボートから見学したりすることができました。
渡航前は、ムスリムの国であるために文化の違いに戸惑うのではないかと心配もしていましたが、食事を含め、それほど困ることはありませんでした。食事に関しては、近隣諸国(マレーシアやシンガポールなど)のレストランも多く、毎日違う国の料理を楽しめる、という点もブルネイの醍醐味のひとつかもしれません。
とにかく快適に過ごせるので、多くの方にブルネイを訪れていただきたいと思います。